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ワークライフバランスインタビュー

ワークライフバランスインタビュー

大葉 ナナコさん

「しあわせな出産を増やしたい」

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バースセンス研究所 所長
大葉 ナナコさん

Profile

大葉 ナナコ / バースセンス研究所 所長

バースコーディネーター、日本誕生学協会代表理事。
1997年、「バースコーディネーター」という職業を生み出す。

2003年、バースセンス研究所を設立。
産前産後の生涯学習、パートナーシップ支援、女性の心身に優しい出産を実現するための調査・研究などに従事。出産の生涯学習プログラムを生み出し「誕生学」(商標登録)と名づける。
2005年、次世代の妊娠・出産・育児を豊かにするべく、「誕生学アドバイザー」育成を開始。

講師たちのプロ集団を作るべく審査認定と誕生学の普及を行う、日本誕生学協会を設立。現在は、人材育成研修・講演を精力的にこなす傍ら、執筆活動も行い、著書は200冊以上 (最新刊は「Life 誕生学の現場から」ポプラ社)。 プライベートでは2男3女の母でもある。

いのちの大切さを伝える生涯学習プログラム「誕生学」Ⓡ
高橋
まずは、大葉さんがライフワークとして取り組んでいらっしゃる“誕生学”について教えて下さい。
大葉
いのちの大切さを伝える生涯学習プログラム「誕生学」Ⓡ“誕生学”とは、妊娠・出産に関する知識と、いのちの大切さを伝える生涯学習のプログラムです。身体の機能や避妊を教える性教育とは少しニュアンスが違って、誕生学が行ういのちの授業は、「いのちってスゴイ」「生まれてきた自分ってすごい」と、感じてもらう時間です。
WHO世界保健機関では、よりよく生きる技術を養う教育全般を“ライフスキル教育”として推奨しています。誕生学Ⓡも、ライフスキル教育の一環といえるかもしれません。ただ誕生学は、教育というよりは、いのちの大切さや、人は誰もがすばらしい生命力の持ち主だという自尊感情を高めることを目的にしています。幼児から成人まで対象別にプログラムがアレンジされ、マタニティクラスで両親になる人へはもちろん、企業の人材育成研修でも、自己肯定感が高まるようです。
もともと母親のお腹のなかでは砂のひと粒よりも小さかった自分が、たった40週間で約3キロもの重さに成長しているって、すごいことですよね。そんな生の力強さを、教育然として知識提供するのではなく、気づいてもらう、再確認してもらう、感じてもらう、というプログラムなんです。
高橋
すばらしい内容ですね。自分が生まれてきたことにあらためて感謝をして、いのちの重さを実感できるプログラムだと思います。
大葉さんは、その誕生学を基礎においたバースコーディネーターのパイオニアでいらっしゃいますが、バースコーディネーターとは、具体的にどんな活動をされるのですか?
大葉
妊娠前・妊娠中・産後の女性やパートナーの、こころと体のケアができるような講習を行うほかに、小学校や中学校などで、妊娠出産の仕組みとセルフケアの方法などを伝える、出張授業を行います。赤ちゃん人形や骨盤の模型を使って説明するんですよ。
私がこのバースコーディネーターとして活動しはじめたのは13年前。「妊娠前からお産の知識を」と、OLさんや学生さんに講座を開講し、週末は妊娠中のカップルを対象にした出産準備教育がメインでした。親になるってやはりいろいろ悩みますから、妊娠前からメンタル面はもちろん、ライフスタイルによって日々の体調を整えるアドバイスを行っていたんです。そして2001年頃から、小学校に呼ばれるようになったんです。「いつも親になる大人の方に教えていらっしゃるんですよね、でも子どもたちにも、赤ちゃんが生まれてくるすばらしさを教えてあげてください」といわれて。
それで、安産教室のように赤ちゃん人形を使って伝えましたら、子どもたちは「すごいすごい!自分ってすごい」って手をたたいて喜んだんですよ。
「お腹のなかにいるときに、生まれたらいっぱい母乳やミルクを飲むぞーって、自分で指しゃぶりをしていたんだよ」とか、「羊水のなかには抜けたうぶ毛とか剥がれた皮膚が浮いているけど、自分で飲んでおしっことして出して、自分が住んでいる部屋を自分できれいにしていたんだよ」というふうに、小さいながらも自分でできていたことを伝えたら、子供たちから「おれはバカじゃなかったんだ!」みたいな可愛い感想文をたくさんいただけて…すごく嬉しかったですね。
中高での授業でも、「のぞまぬ妊娠はしたくないと思いました」「親からとても愛されていたことを知りました」とか、子どもたちはすごくいい反応をしてくれるんです。
そこで、これはぜひ継続的な活動にしたいと思って、8年前に「誕生学」の商標登録を取りました。登録の定義は、「未就学児、小学生、中学生、高校生。大学生、および成人を対象に行う、妊娠出産の仕組みと命の大切さに関する知識の教授」にとしています。
高橋
そういった活動を通して、あらためて気づいたことはありますか?
大葉
いろいろありますが、特に強く感じたことは、妊娠や誕生に関する社会の認識の低さでしょうか……。日本の場合、妊娠した5人に1人が中絶を選択しています。性は心が生きる、と書きますが、中学や高校に行っても、子どもたちにとって「妊娠はヤバイもの」と解釈している現状があります。いのちの授業のあとに、「妊娠って、ほんとうは大切なことだと思いました」という声を聞くと、「え!それまではそう思ってなかったの?!」と驚くことが多々あって。
育児は大変、負担が大きいというニュースが流れているし、親も「あなたを育てるのは大変だ」と言うし、故に子供達が“生まれる”ことが嬉しいことだと実感できなくなっているのかもしれません。
高橋
私も常々感じているのですが、社会では働きやすい環境とよくいうけれど、それよりも前に、【生みやすく育てやすい環境】が大切だと思うんです。産みやすくないから育てにくいと思ってしまうし、産みやすければ育てることを楽しいと思う。環境が整っていれば、子供を産み育てるという現社会の認識が、少し変わってくると思うんですよ。
大葉
おっしゃる通りです。子供は作るものじゃなくて、授かるもの。子育てとは、ひとりの幸せな大人を育て、世の中に返していくという素敵な行為なのに、そのスタートである出産がネガティブなのは、悲しいことですよね。「妊娠してしまった、マズイ!」ではなく「いのちを授かった、ウレシイ!」と思う命のはじまりを増やしたいと思っています。
高橋
いま社会的に“産後うつ”が問題になっていますが、大葉さんはそれについてどう思われますか?
大葉
そうですね、孤軍奮闘というか、たった一人で毎日赤ちゃんと向き合って、心許せる大人との接触が激減したら、私でもウツになってしまうかも。「人に助けを求めることは親として一人前じゃない」と考えてしまうと、ネガティブになってしまいます。社会的に子育てを助けるシステムを整えていき、子育てはみんなで助け合うのが当たり前という環境を増やしていくことは、、産後うつを減らすために重要課題だと思います。
高橋
やはり子育てって楽しい事じゃないですか。
だからもっと周りの人を巻き込んで、子育てをシェアしていけばいいと思うんですよ。自分の楽しい育児をお隣の方に伝える、さらにそのまたお隣の方にも伝えるという風に広げていけば、ご近所との関連性も生まれてきますから。
大葉
たしかにそうです。
この前、WHOの母子保健の専門家にお会いした際にも「妊娠・出産・育児は本来、ジョイフルなもの」とおっしゃっていて、本当にそうだと思いました。
高橋
ジョイフル&ピースフルですよね!
いまの社会では、地道に、毎日をやりくりしている、私たちのような働くママの姿を、身近に見る機会が少なすぎる……ロールモデルがいないんですよね。
どうしても、テレビや雑誌で取り上げられると「あの人たちだからできるんだろう」と思われてしまうけれど、そうじゃないんです。私たちを含め、生活のなかでいろいろ工夫をしながらワーキングマザーをやっている人は山ほどいるし、輝いている人はたくさんいる。そういう女性たちが自分の言葉で、出産や育児に関して次の世代へ伝えていくことが、これからは大切になってくると思います。
大葉
そう、ほんとに同感です。そういう女性たちが、バースコーディネーターとして活躍してほしいと思っています。

バースセンス研究所

妊娠準備、出産準備、産後のクラスで育児期を幸せに!誕生学アドバイザー研修情報も。
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バースセンス研究所
http://www.birth-sense.com

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