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ワークライフバランスインタビュー

ワークライフバランスインタビュー

佐藤 真琴さん

「患者さんの笑顔を作りたい」

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ヘアサプライ ピア 代表取締役
佐藤 真琴さん

Profile

ヘアサプライ ピア 代表取締役 / 看護師

1977年静岡県生まれ。高校を卒業後、アメリカ留学や会社勤務を経て、静岡県内の看護学校入学。
実習中に出会った白血病患者が、高額のかつらを買えなかったという出来事をきっかけに、起業を決意。
低価格なかつらを製造すべく、単身中国に渡り、数社の人毛かつらメーカーと提携。
2004年に「ヘアサプライ ピア」を設立し、ネット販売を始める。
2006年には専門の美容室を開店。
抗がん剤の副作用に悩む患者のかつらを作成するとともに、メンタル面のケアも行い、患者とその家族の生活向上をトータルでサポートしている。

既存の体制を変えるために、“自分ができることをやろう”と決意
高橋
「ヘアサプライ ピア」を立ち上げるきっかけを教えてください。
佐藤
そもそもは、看護学校の実習で出会ったある白血病の患者さんが、かつらの値段があまりに高くて買えなかったという出来事がきっかけです。私も知らなかったのですが、当時病院で紹介していたかつらは、一つ作るとだいたい100万円はかかったんですよ。一般の人にはなかなか手が届かない金額ですよね。その方はクリーンルーム(空気清浄度が確保された部屋)にいたので、ただ息をしているだけでも月に150~200万かかってしまうのですが、「さらに100万もかかるかつらを買うなんてできない」とおっしゃっていて…。その時の私は、「そうですよね…」と言うしかできなかったですね。
高橋
きっとその方は、「これ以上、家族に負担をかけるのは申し訳ない」という気持ちで、遠慮されたんでしょうね。
佐藤
そうなんです。患者さんは、「私が病気になったからみんなに迷惑をかけている」と思っている方が多いんです。もちろん迷惑がかかっているのは事実で、私も母を4年間介護したのでわかるのですが、たしかに負担が大きいんですよね。だから、その後看護師になってたくさんの白血病の方に接しましたが、高額のかつらを勧めるのがすごく嫌だったですね。なんとなく患者さんの足元を見ているような感じがしたし、病院側やかつら屋さんの対応とか、いろんなものを見て“カチン”ときてしまって…。
高橋
それで、真琴さんはいてもたってもいられなくなり、中国に人毛を探しに行ったんですよね?!一人でですか?
佐藤
一人です。今も一人で出かけています。
高橋
それは何年前の話?
佐藤
9年前。26歳の時です。
高橋
すごいですね。26歳でそういうことを考えるなんて!何が真琴さんをそこまで突き動かしたんですか?
佐藤
そうした病院の現状に腹立たしかったんだと思います。患者さんが弱者にされているんですよ。その時に、「看護師は毎年たくさん出てくるんだから、私がべつに看護師にならなくても世の中は困らない。だったら自分ができることをやろう」と思いました。
高橋
そして「ピア」を立ち上げられたんですね。がん患者の方向けの美容院を運営するだけじゃなく、患者さん同士のコミュニティの場を作ったり、多くの病院とパートナーシップを結んだりとさまざまな活動をされていらっしゃいますが、そうした活動を通して、真琴さんが実現したいことって何ですか?
佐藤
患者という立場になったときに、どんな人も困ることのない環境を作りたいですね。がんになって治療をしてみないとわからないことがたくさんあって、それは健康に生活していたら知らなくてもいいことかもしれない。けれど今は2人に1人ががんになる時代です。実際になった時に、「困った、どうしよう」ではなく、例えば、「髪の毛が抜けますから、じゃあ、かつらを」とか、「爪がはがれてくるので、こういうネイルをやってくれるところがありますよ」とか、そういった情報がたくさん入ってきて、しかも手頃な価格で買えるような、そんな環境になればいいと思っています。
高橋
すばらしいですね。じつは私にも、47歳でがんで亡くなった叔母がいましたが、もし彼女が今いたら、すぐに真琴さんのところに連絡して、相談にのっていただいたと思います。「ピア」の一ファンとして、これからの活動をもっともっと広げていってもらいたいと思っています。
佐藤
ありがとうございます。
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