ワークライフバランスインタビュー
「世界一思いやりのある企業に」
第14回
株式会社 生活の木 代表取締役
重永 忠さん
進化させていきたい文化
- 高橋:
この事業を始めて今年で32年目になられるそうですが、次世代に伝えていきたいこと、あるいはより進化させていきたいことについてお聞かせください。
- 重永:
- 『オール自前主義』は生活の木の哲学として変わらず継承し、さらなる進化という面ではより人を大切にする会社にしていきたいです。
僕はこの会社を、最終的には「世界一思いやりのある企業」にしていきたい。世界一大きい会社でもないし、業界一の企業でもない。人を思いやることを当たり前にし、その集合体として思いやりのある企業になっていきたいです。そこで重要なことは、やはり人なんですよね。『ひと』にずーっと関心をもって経営していきたいし、言い換えれば世界一人間臭い企業にしたいなと思ってるんですよ。
仕組みや、システム、マニュアルなどと真逆の企業が理想です。コンビニエンスストアやインターネットなどのお陰で、モノはいつでもどこでも入手でき、情報も効率的かつスピーディに探すことができるなど、世の中はどんどん便利になっています。それに対し、自然の恵みの豊かさや、手間隙かけて気持ちを込めて作ること、そっちをみつめなおしてみませんか?という考え方が生活の木の商売のヒントでもあるのです。そういった考え方の源は『ひと』であり、『心』です。したがってモノ先行の企業、ではなく『ひと』を第一に考える『心』をもって商売できる企業にしていきたいですね。 - 高橋:
- すばらしいです。まさに生活の木の哲学ですね。
そのような哲学について忘れられないエピソードがあればぜひお聞きしたいのですが。 - 重永:
- 独立してアロマの会社を設立した元社員とわが社が、卸や企画の面で応援をし合ったり、社員が家庭で家族の健康のために、仕事をやりながら覚えたアロマやハーブを使っていたり・・・。生活の木の哲学を学んだ社員が、自分の人生や生活といったフィールドでやっている。そこに絆を感じますし、経営者としても、人としてもそれがとても嬉しい。
社員に愛されている事業・企業であることに、商売の面以外での強い存在意義を感じられます。 - 高橋:
- とても人間味のある会社ですね。思いやりの哲学が生きていますね。
- 重永:
- ありがとうございます。
生活の木は『世界一思いやりのある企業』であると同時に、『世界一社員に愛される企業』でもありたいですね。
生活の木の挑戦 ~発展途上国に産業を~
- 高橋:
今後、『世界一思いやりのある企業』をより進化させるためのチャレンジや構想についてお聞かせいただけますか。
- 重永:
- スタートしてもう何カ国か実現しているのですが、自立を前提においたビジネスプログラムの提供を発展途上国に行っています。
アフリカのガーナでの取り組みを例にします。自然の恵みとしてシアバターという保湿性の高いバターがあり、近年様々な化粧品に配合されているのですが、ガーナの方々はその恵みをうまく産業化できていませんでした。そこで、我々が石鹸やクリームづくりの方法から、きちんとした商品を製造できるところまで技術指導をしました。次は出来上がったシアバターを我々で買って、全国100店舗の直営店で販売します。そうすると、シアバター産業というものがガーナで根付いていきます。産業がお金をもたらすことで生活水準が上がっていき、そして独立するのです。 - 高橋:
- まさに世界基準の思いやりですね。
- 重永:
- 我々の商品の素材は自然の恵みですが、それを使う日本だけに利益があれば良いというわけではなく、それを生産している国の方々にも感謝と思いやりをもって接し、生活水準など良くなって欲しいと考えています。
もちろん、今後もより多くの国での実現を目指してゆきます。
それからもうひとつ、地球への思いやり。とにかく、できる限り我々の身の周りにあるものをリサイクルしていこうと。例えば、紙のごみができますよね。うちは工場からでる紙のごみをすべて圧縮機で圧縮し、製紙メーカーさんに回収・リサイクル処理してもらっています。そのリサイクルされた紙でうちの商品の配送のためのカートンBOXをつくり、それを使ってお客様に届ける。これが紙のリサイクル。
生ごみのリサイクルも行っています。レストランからでる生ごみを全て回収して、堆肥化し、ハーブガーデンの有機肥料として使い、ハーブを育てていく。育ったオーガニックハーブを、レストランで食材にすることでリサイクルしています。
また、お客様が私どもの商品を使うと残ってしまうガラスビンを直営店の店頭で回収させて頂き、別のガラス製品にリサイクルして店頭でまたお渡しするガラス瓶のリサイクルも実施しています。
日本の若者へのメッセージ
- 高橋:
- 全てが『思いやり』でつながっていますね。『人への思いやり』だったり、『地球への思いやり』だったり・・・。それは、私達の次の世代への思いやりでもある気がします。
これからの、次世代を担う日本の若者へ、ぜひメッセージを。 - 重永:
- 若いとなかなか気付かないことなのですが、『自分の人生は何のための人生なのか』ということを考えていただきたいです。
『自分のための人生』であることは当たり前のことなんです。しかし、『自分と誰のための人生』なんだろう、ということを意識して欲しいのです。昔、萩本欽一さんが言っていたことで、「夢は、自分だけの夢だと思っているとなかなか達成できない。でもその夢を、誰のために、困った人のために、何かしてあげたいと思うと達成できる。また、「一緒に夢を達成したい誰か」がいれば、割と早く達成できるんだ」と。それを聞いて、これからはもっと周りのことに目を向けようと考えたんです。会社をやっている意味とは何か、誰のためにがんばっているのか、と具体的に考え始めました。
若者には、叶えたい夢があるものです。しかし、「自分のため」という考え方だけではなくて、「誰のために、何のために、貢献したいか」と、また、「どんな社会にしたいのか」「どんな業界にしたいのか」といったように、自分、自社以外に対して、夢をもってもらいたいですね。
生活の木のCSR活動 ~コミュニティートレード〜
私たちの周りには、伝統の手づくり製法で小規模にしか作れない植物性バター、海外の安価な大量生産品に押されて市場を失った日本産の精油など、大量生産・大量消費には向かなくても素晴らしい価値を持った産品がたくさんあります。
これらは流通に乗りにくいという理由だけで、お客様の手元に届かないのです。また、生産者は買い手がつかないという理由で価値ある産品を作り続けられなくなるのです。
生活の木は、これらを生産する地域コミュニティーと価値観を共有するお客様とをつなぐ為に、コミュニティートレードに力を入れています。