株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室 淑恵さん【その2】

対談
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ワークライフバランスインタビュー

小室 淑恵さん

「ワークライフバランスの種を蒔く」

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株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長
小室 淑恵さん

armo[アルモ]

休業者職場復帰支援プログラムarmo[アルモ]。
介護やメンタル不全による長期休業の方向けのサービスもリリースされ、どんどん拡張されています。

起業のきっかけ - 『これからは男性にも育児支援を!』

高橋
起業されてどのくらいになりますか。
小室
今年の7月で、丸2年になります。
起業と長男の出産がほぼ同じですので。
高橋
私と一緒なんですね。
私も娘の生まれ年とベアーズの生まれ年が一緒。
小室
先輩がいて安心しました!(笑)
高橋
(笑)
では、ワークライフバランス支援事業という、今までにないビジネスモデルでの起業のきっかけを教えていただけますでしょうか。
小室
わたしはもともと前職で、入社2年目の時に社内のビジネスモデルコンテストに応募したことがきっかけで、育児休業者の復帰支援プログラムで社内ベンチャーを立ち上げました。2002年に販売を開始し、最初は全く売れないながらも社会の追い風を受けて徐々に導入企業は増えたのですが、クライアントの企業様から「男性の育児休業者には使いにくい」とご指摘をいただき、衝撃を受けました。当時、私はそのプログラムをピンク一面で作っていたのです。つまり“育児は女性がするもの”という思い込みで作っていたのです。しかしご指摘いただいたことによってこれから男性も育児休業を取ることに気づきました。他にも、介護で休業する管理職の方や、メンタルで休む方もいらっしゃるとお伺いし、これからは様々な理由で男女関係なく休業する時代になり、休業者が非常に増加するという事実に気づきました。それなのに、日本企業には復帰後に以前と変わらず活躍できるような風土はなく、頑張りたい人ほど結局辞めてしまう。
復帰支援プログラムの提供と同時に、受け皿である企業のほうの風土変革をサポートすることが重要だと言う問題意識を持ちました。そういった仕事は存在するのかと考え始めた矢先、イギリスでは2000年頃から行政がワークライフバランスコンサルタントを雇うための補助金を企業へ出していることを知りました。企業の内部だけでは多くのしがらみが原因で変革を起こすことは難しいので、外部のプロフェッショナルがコンサルティングを行い、効果を出しているのだと。
聞いた瞬間、「ワークライフバランスのプロ、これが私の仕事だ」と使命を感じました。単純な人間は使命を感じやすいんだと思います(笑)
高橋
起業から現在までの2年間を振り返ってみていかがですか。
小室
一番良かったのは、起業してから仕事一辺倒では無かったことだと思います。子どもがいてくれて・・・。
社員の生活を背負って、資金などの責任を一手に担う立場ですから不安とプレッシャーが重くのしかかります。
もしも私が24時間会社のことを考えていて、こだわり過ぎていたら私もプレッシャーに負けていたと思うのですが、子どもがいてくれたおかげで、プレッシャーのことを考える暇がありませんでした。たとえば当時、私にとっては仕事の難しさと同じくらい、子供をどう寝かしつけるか、どう泣き止ませるかに四苦八苦していました。
また、家族の精神面での支えがあったことで、プレッシャーを感じすぎることなく、前向きな姿勢をキープできたのではないかと思います。
高橋
ステキなお話ですね。
私もある意味我が子たちが、起業の一番の理解者であり応援をしてくれる存在であると思っています。そんな風に、あえて同じ境遇の方から聞かされると感動しますね。

小室さんのワークライフバランス - 『経営者として、ママとして』

小室さんのワークライフバランス - 『経営者として、ママとして』
高橋
家庭に仕事にバランスを配慮しながらご活躍されている女性の皆さんに対してとても大きなエールになると思いますので、小室さんの「経営者として、ママとしてのワークライフバランスの秘訣」についてお伺いしてもよろしいですか。
小室
「何事も一人抱え込まないこと!」ですね。
起業まもない頃、高熱で4日間寝込んだことがありました。その日はとても大事な商談があったのですが、しかたがなく社員に行ってもらいました。難しい案件でしたので、「今日はつないで来てくれるだけでいいから」とお願いしたのですが、見事クロージングして帰ってきたんです。衝撃を受けました。それまでの1人でなんでもできる、やったほうがいい、やらなきゃいけないという思い込みが、間違いだったんですね。
また、もし自分が商談に出ていたとしたら、社員の成長を妨げていたと思います。実際、彼らはクロージングをしたものの、相当に力不足を感じたらしく、猛勉強を始めました。
経営者である私と同等の体験を社員もどんどんすることで、責任委譲するからこそ、信頼をもって仕事を任せられる存在に成長することを、そのとき初めて思い知りました。
それは家庭の場合でも同様に、夫やベビーシッターさんなど家事や育児を任せられる相手を信頼し、協力してもらうことで仕事と生活それぞれのバランスを取れるのだと思います。
高橋
なるほど。
私たちベアーズも、皆様のワークライフバランスのために、信頼をもって家事と育児をお任せいただけるよう、今後とも精励して参ります!

識者としての活動 - 『行政と企業のギャップを無くす』

高橋
小室さんは、内閣府や厚生労働省など4つの政府の委員をされて貢献をされていますが、その活動内容、そこでの小室さんの役割について教えていただけますでしょうか。
小室

私は現在、以下の4つの委員に入っています。

  • 内閣府 男女共同参画会議 「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会」委員
  • 内閣府「新しいライフスタイルの創出と地域再生に関する調査研究」研究委員会委員
  • 厚生労働省「人生85年ビジョン懇談会」
  • 内閣府「仕事と生活の調和連携推進・評価部会」委員

行政主導の施策が企業には規制強化だと受け止められて抵抗を一斉に受けてしまうケースが多いのですが、今回のワークライフバランス関連施策に関しても、その危険を大いにはらんでいます。行政は、企業のニーズを正確にとらえて施策をうちたいと思っているのですが、行政が直接企業にヒアリングしてもなかなか実態を話してもらうことは難しいですよね。、たとえば社内は法定を超える残業だらけというような実態を開示することはなく、企業はいい答えしか出しませんから、ヒアリングをもとに作った政策が企業の実態にマッチしないのです。
弊社は企業様のワークライフバランスをコンサルティングする際、その本音・実態を聞かなければ対策を組めませんので、企業のニーズや実数字を的確に把握しております。そこで、ニーズに合致した効果的な施策を行政が打ち出せるように、企業名は伏せた上で実態を伝え、さらに仕事を通じて得たアイデアを議論の場で提供しております。

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