株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室 淑恵さん【その3】

対談
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ワークライフバランスインタビュー

小室 淑恵さん

「ワークライフバランスの種を蒔く」

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株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長
小室 淑恵さん

armo[アルモ]

休業者職場復帰支援プログラムarmo[アルモ]。
介護やメンタル不全による長期休業の方向けのサービスもリリースされ、どんどん拡張されています。

日本におけるワークライフバランスの問題点

高橋
現状、日本におけるワークライフバランスは一般的にはどう捉えられ、また小室さんとしましてはどうあるべきか、お考えを教えていただけますでしょうか。
小室
ワークライフバランスという言葉の意味を、ワークを重視する人間はライフが小さくなり、ライフを重視する人間はワークが小さくなる、という風に、ワークとライフが互いの領域を取り合うような誤解をされている方々が多いと感じます。
若い方、中でも責任感の高い人ほど、自分の社会的な責任を果たせないまま、ワークライフバランスをとることに罪悪感を感じる傾向があります。でも実はワークとライフはそういう考え方ではありません。ワークで実績を出すためにもライフを充実させるべきなのです。
以前の日本は大量生産型の商業が大半で、時間を呈すればその分が成果に繋がり、残業はそのまま利益になりました。
しかし現在、「早く・安く・大量に」では中国やインドにかないません。しかも日本は成熟市場を持つ国になりました。このような状況ではプラスアルファの付加価値をつけた商品・サービスしか売れません。そのための、魅力を創るアイデアがとても重要です。
そのアイデアの源はライフにあるはずです。つまりライフの中でインプットした体験を源に、湧いたアイデアをワークの時間でアウトプットしているんです。
ライフとワークはシーソーのようなものではなく、ライフはワークのベースで、ライフがしっかりしていなければワークで良い結果は出ないということです。
したがって、私たちは今、ワークの時間のためにもライフの時間をちゃんと取るべきなのです。
高橋
おっしゃるとおりです。
小室
また、若手の方は自己研鑽のためにライフを積極的に取るべきです。
若いときに自己研鑽していない人は時間と共にどんどんスキルが落ちてしまいます。若くて独身で、育児も家事も介護も無い時だからこそ自己研鑽に時間を使わなければいけません。また、スポーツなどで生涯活躍できる体力基盤を作ることも重要です。
ライフの時間の結果として健康が保たれて、パートナーとコミュニケーションが取れて、自己研鑽できるているからこそ、ワークの時間にアイデアがどんどん湧き、人脈も広まって、効率的に仕事が終わって・・・、とライフから始まってサイクルする相乗効果の関係がワークライフバランスなんです。
それをシーソーのような考え方に誤解されていることが一番もったいないですね。
高橋
小室さんの著書で私が特に印象的だったのが、『ワークライフバランスはライフとワークのハーモニー』というフレーズなのですが、まさにそういうことですね。
小室
ええ、好循環を作り出すんだと発想の転換をすると、いい仕事をしたいという気持ちはいいライフを持たなければ、という気持ちにちゃんと繋がるはずです。その“繋がり”が認知されていないことが最大の問題点であり、意識を変えていかなければなりません。

小室さんのハッピーバランス - 『夫と協力!』

高橋
では、ご自身のハッピーバランスについて伺います。
いかがでしょうか。生活と仕事の間で何か工夫をされてらっしゃることはございますか。
小室
夫婦で育児と家事をいかに協力できるかを常に考えています。
たとえば、朝は夫が育児と家事をやり、夜は私が、と。朝起きて子供を送り届けるまでの間、夫が朝食を作って3人でお風呂に入って…。
高橋
3人で朝風呂だなんて気持ちよさそうですね。
小室
ええ、みんなで水鉄砲とかしながら40分くらい3人で入ってます。
家族全員が必ず揃う朝をコミュニケーションの時間にしているんです。
朝の時間を見直してからは、全てがうまく回っています。以前、夫は深夜に帰宅して、飛び起きて朝食も取らずに出勤していましたが、今は、朝6時に起きて全員分の朝ごはんを作ってくれるようになりました。
高橋
すごい、どんなメニューがでてくるのでしょうか。
小室
結構いろんなものを作ってくれますよ。
最初のうちはいくら丼や親子丼など丼ものが多かったんですが(笑)、今はご飯と味噌汁とお魚ともう1品とサラダ、など手際良く作ってくれます。栄養バランスも考えられてて、息子のために納豆オムレツをいつも作ってくれたり・・・お味噌汁の具も具沢山ですよ!そして子供が保育園に行く用意までやってくれます。
私はその間に半身浴を楽しんだり、フィットネスルームに走りに行ったりと、自分の時間として使わせてもらっています。
高橋
ご主人を信頼されて、まさに協同作業ですね。すばらしい。
小室
私にとってのハッピーバランスの秘訣は、ワークライフバランスの考え方と一緒ですが、『周りを信じて任せていく』ということです。
会社では部下や同僚を信じて仕事を任せ、家でも夫を信じて家事と育児を任せていく。一緒に何かやれる相手を信じて任せ、一人で抱え込まないことがバランスとる上で重要だと思っています。
高橋
なるほど。
私も家でやってみようかしら・・・。夫から負担が多すぎると小室さんにクレームが来てしまうかもしれませんが。(笑)

今後の展望 - 『社会により沢山のワークライフバランスの種を』

高橋
最後に、ワーク・ライフバランスとご自身の今後の展望をお聞かせ願えますか。
小室
まず今後わが社では、ワークライフバランスコンサルタントを増やし、全国津々浦々の企業をサポートできるようにする事業を進めていきたいです。
このワークライフバランスコンサルタント養成事業は結果として弊社のライバルをつくることになる可能性もありますが、日本社会により早くワークライフバランスを浸透させる必要がある現在、弊社だけでは手が足りません。
そこで自治体などと協力しつつ、クオリティの高いワークライフバランスコンサルタントを育成し、地域の企業にどんどん派遣する事業を、新たな柱にしていくつもりです。
私生活では子供の幸せのために、家族団らんの時間をもっと多くしたいです。
そうすると夫が早く帰宅できれば、という結論に至ります。ならば私が経営者として事業を拡大し、ワークライフバランスの種を沢山蒔いて夫の職場まで影響をもたらすことが出来るように、社会の構造を変えていかなければならないとよりいっそう強く思います。
結局、仕事も私生活も展望は繋がってしまいましたね。
高橋
小室さんご自身も含めた、みんなが幸せに過ごせる日本社会のために事業を拡大していく・・素敵なお考えです。ありがとうございました。
≪対談を終えて≫

ワークライフバランスは社会情勢から、ビジネスチャンスとしての視点で語られることが多くなっています。
しかしその普及に最も尽力している小室さんは、モチベーションを「団らんの時間を増やすため」など、“家族の幸せ”と位置づけてらっしゃいます。
それに対し、私たちの日常は「何のために働いているのか」「幸せとは何か」ということをとかく忘れがちで、また考える時間すら無い場合もあります。
このインタビューを読んでいただいていた皆様、ここで幸せについて考えてみませんか。そうすればきっとワークライフバランスへのモチベーションが湧いてくることでしょう。
そしてあなたに引き寄せられる、幸せの足音が聞こえるはずです。

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