株式会社ベネッセコーポレーション『bizmom(ビズマム)』編集長 糸藤 友子さん【その2】

対談
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ワークライフバランスインタビュー

糸藤 友子さん

「ワーキングマザーを応援します!!」

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株式会社ベネッセコーポレーション
『bizmom(ビズマム)』編集長
糸藤 友子さん

『bizmom(ビズマム)』2008年秋号

『bizmom(ビズマム)』は、働くママとこれからの働くママを応援する雑誌とWebサイト。
9/13発売の秋号では「働くママが知りたい 子どものSOSサイン」を大特集!「量より質」のコミュニケーションで子どもが健やかに育つ関わり方から、子どものSOSの見分け方まで、働くママならではの悩みを解決。
その他、家事時間を短縮するグッズ&サービスのクチコミランキングや、避けては通れない「お留守番」など、見逃せない情報が満載です!

糸藤流、ワーキングマザーへのアドバイス

糸藤流、ワーキングマザーへのアドバイス
高橋
ワーキングマザーの中には幼い子供を後にして働くことへとの罪の意識を抱えている方も多いと思いますが、それに対し糸藤さんはどうアドバイスしているのですか。
糸藤
まずは“3歳児神話”(※注①)に根拠はないということを伝えます。
心理学者で子育て支援などで活動なさっている恵泉女学園大学大学院の大日向雅美先生は、確かに3歳までは子供にたくさんの愛情をもって育てることが大事ですが、それが母親だけでなくともよく、父親でもいいし、おばあちゃんでもいいし、保育園の先生でもいい。大切なのは子どもが安心できて精神的に安定できる環境で養育することだ、とおっしゃっています。これは厚生労働省も1998年の厚生白書で「合理的な根拠はありません」と、神話を否定しています。このように母性神話に置き換えられて誤解されている部分をまずは取り除きます。 そして、高橋さんのような方をロールモデルとして、ありのままその姿を紹介します。
結局、“小1の壁”(※注②)にしろ、悩んでいる皆さんは正しい情報を知らないだけで、なんとなく自分の中で罪の意識を抱えてしまい、働き続けることも子供の成長も不安になっているのかもしれません。
高橋
おっしゃるとおりだと思います。そんなとき、自分の中に揺るぎない“軸”をもっていると強い。“軸”は人それぞれでしょうが、「こう生きたい」という軸を皆さんが持ってくれたら、何かに迷っても、「働く私を諦めちゃいけない」と気持ちが楽になるのではないしょうか。
糸藤
そうですね。
会社を辞めるのは簡単ですが、1度辞めてしまうと復帰は難しい。多くは正社員として雇用はされず、生涯賃金も1.5倍ほど差がついてしまうようです。
だから会社でも、ビズマムを通じて出合ったママたちにも、辞めたくなったら、辞める前に必ず電話かメールしてって言っています。子どもが小さいうちは、たとえ会社に少し迷惑をかけても、同僚に謝り続けてもやっぱり働き続けることの方が結果的に良いはすです。
“軸”があっても悩んでしまうときはワーキングマザーを経験してきた私たちやビズマムというメディアが前向きになれるようにアドバイスしていければと思います。

ワーキングマザーの子育て論 - 『ママの背中を見せる』

ワーキングマザーの子育て論 - 『ママの背中を見せる』
高橋
仕事をしているということは、子どものためにもなると思います。私も仕事で日々いろんな方にお会いして、そこで見聞きすることが子育てに役立ちますし、逆に子育てしていることで、例えばベアーズの社員や、取引先の方の痛みや状況を察することができたりして、とても良い相乗効果になっています。
糸藤
ええ、私も子どもには私の背中を見せて育てています。
昔はね父親の背中を見て子どもは育つとか言いましたけど、うちは父と母の背中を見て育っています。上の子がよちよち歩きしていたきから、取材であったことなどを話していました。今でもよく話すのですが、「ビズマムが売れてる」って言うと彼らはすごく喜びます。ワーキングマザーである私を理解し、応援してくれているんです。夕飯が遅くなるとか文句は言いますけど(笑)。
高橋
私も子どもたちに励まされて今の私があります。
よく今まで、子供たちも理解して応援してくれたなと思います。また、子どもの理解も大事ですが、その理解を自然と行動に移していってくれるようにすることもまた大事です。子どもに何しなさい、こうしなさいと言いつけるのではなく、ママ、パパがこういう状態のときには何をすべきか考えさせるのです。かっこいいこと言ってますけど、要はほったらかしてます(笑)。そうすると意外に、私が出張から帰ったりすると、子供たちでお米といでたり、洗い物も全部終わってたりしています。
糸藤
ママが大変だと分かっていて、自分は家族として何ができるのだろうと考えてやってくれているんですね。
高橋
彼らが大人になったら、働く女性はもっと増えていると思います。ですので、今から母親の生活や生き様を現実のものとしてしっかり見せておくというのは、教科書には書いていない真の教育として、社会性のあることだと思います。
糸藤
ビズマムも【子どものお手伝い】という記事に力をいれていて、とても好評です。 子どもが自立すれば親も楽になりますし、それに子どもも自ら生きる力が身に付きます。
高橋
お手伝いをやらせている、というのではなく、遊び感覚でやれれば、子供と一緒に家事をやる時間は、“親子のコミュニケーションの場”に大進化します。各ご家庭の大切にしてきた古きよき風習を継承する場にもなりますよね。
糸藤
いいですね。
でも私の息子でもいやいやながらお手伝いをやっているときがあります。そんなときは、「家事もできない男はもてないよ」と言っています(笑)。ちょっと強制的ですが、これから女性も経済力を持つ時代になります。女性が男性を選ぶ基準に“家事力”が入ってきてもおかしくありませんから。
注①
三歳児神話(さんさいじしんわ)とは、「乳幼児期は母親の愛情が大切であり、母親が育児に専念しないと子供が寂しい思いをし、将来的にも取り返しのつかない傷を残す場合がある」という考えを「神話」だとする概念を指す。この意味での「神話」とは、根拠がないのにもかかわらず一般に正しいと思われている事柄を「神話」の不確実性に例えたものである。
注②
小1の壁(しょういちのかべ)保育園から小学校へ上がる際、共働きの親が抱えると言われる問題。両親がフルタイムで働いている場合、小学校の学童保育が終わる6時ころ までに帰宅するのは難しいのが現状であるのに対し、子供は小学校に入学して急にしっかりするわけでもないのに、子供はひとり家で過ごすことになり、親は安全面や精神面でも心配 がつきない。
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