株式会社トレジャー・ファクトリー 代表取締役社長 野坂 英吾さん【その2】

対談
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ワークライフバランスインタビュー

野坂 英吾さん

「事業拡大こそが社会貢献」

第5回

株式会社トレジャー・ファクトリー 代表取締役社長
野坂 英吾さん

野坂
まず、実際にリサイクルと名の付くお店を回ることから始めました。起業に意気投合した大学の友人と一緒に、合計で48店舗、1件1件お店を回っていきました。
リサイクル品を扱っているお店は確かに既にあったのですが、そのほとんどは経営難に陥っているようで、店の経営者の方から「やめておきなさい」と相当止められました・・・。形にするのに1年近くかかったのですが、友人はなかなか形にならないこの状況を鑑みた結果、私と別の道を歩むことになりました。忘れもしません、ファミリーレストランで話しあって。起業する前に独りぼっちになってしまいました。
高橋
今でもその彼とは交流があるのですか?
野坂
ええ。 ファミリーレストランでの一件の何年か後、「会社も軌道に乗ったから来ないか」と話を持ちかけたこともあります。そのとき彼からは「今からではおまえに迷惑がかかる」と断られましたが、彼は彼なりの道を邁進し、今でもとても良い友人関係です。
でも当時、一緒にやるはずだったパートナーがいなくなるというのは、心にとても大きな穴が開いたようでした。
しかし私は周囲に起業すると宣言し、一部雑誌にも学生起業家として取り上げてもらっており、周囲に助けられつつも後には引けない状況でした。
そして一人でもやっていくしかない、と決意しました。
起業することに何か手ごたえのようなものはありましたが、それでも不安の方がはるかに大きかった。
高橋
その決意から13年、トレジャー・ファクトリーを取り巻く状況や、事業の成長を振り返ってみていかがですか。
野坂
何よりも、考えていた以上に社会が大きく変化してきたことを感じます。ちょうどスタートしようとしていた1995年が、東京都の粗大ごみが有料化になるタイミングで、“どんなものでも無料で捨てられてしまう、だからもったいないと思いながらも平気で捨ててしまう”、この通念がリサイクルなどの地球環境に目を向けたものに変わり始めた時期でした。私たちトレジャー・ファクトリーは、事業を通じて少しでもこの変化が早く浸透するように努力してきましたが、むしろ現在は社会の方がこの変化のスピードを増してきていると感じます。社会の変化に伴って大きくなる私たちの仕事の役割を、変化に応えるサービスを提供し、普及させていくことで、果たしていくつもりです。

東証マザーズ上場について
-『喜び、発見、感動を提供する実感のある仕事を続けるためのハードル』

東証マザーズ上場について -『喜び、発見、感動を提供する実感のある仕事を続けるためのハードル』
高橋
野坂さん達の13年間の積み重ねの成果と、これからさらに大きくなる社会での役割を果たすために、トレジャー・ファクトリーは昨年12月に東証マザーズに上場されましたね。
おめでとうございます!
野坂
ありがとうございます。
高橋
上場はご自身の目標として、どのような位置づけなのでしょうか。
野坂
経営理念である、喜び、発見、感動を提供する実感のある仕事を続けるためのハードルの一つです。
私は学生時代にインターンシップで会社の一員として働かせていただいた体験を通じて、多くの方々に貢献し、喜び、発見、感動を提供する実感のある仕事をしたいとの想いを持ちました。経営者になった今でもその想いは変わりません。より多くの方々に私たちのサービスを使って頂き、より多くの喜び、発見、感動を提供し、それを実感するためには、長期に渡って成長し続けていける企業にすることが必要です。そのために上場というものを目標にして、会社作り、人作りをしてきました。ようやくこれから自分のイメージしていた、私たちのサービスを沢山の方々に使ってもらえるステージに来たのかな、と感じています。
高橋
上場後、何か変化はございますか。
野坂
まず、社会からの注目度の高まりが一番でしょうか。仕事そのものを知っていただく機会が増えたり、メディアに取り上げていただける機会も増えたり。
そして共に働く仲間達も、上場を機に自分たちの仕事にやりがいと誇りを強く持つようになり、同時に、社会的責任への認識も増した、という印象があります。
高橋
野坂さんご自身はいかがでしょうか。新たな決意や考え方の変化などはございませんか。
野坂
私自身は永続する企業作りへの責任感が増しました。そして、今まで以上に初心を忘れない経営を心掛けようと決意を新たにしている所です。

社会貢献とビジネス - 『事業拡大こそ社会貢献』

社会貢献とビジネス 事業拡大こそ社会貢献
高橋
なるほど。 そんな野坂さんは、社会貢献とビジネスとの関係(CSR)はどうお考えでしょうか。
野坂
創業時から、社会貢献とビジネスは切り離して考えてはいません。
これもリサイクルビジネスを選んだ、ひとつの大きな理由です。仕事そのものが大きな社会貢献となりますので。
私たちが行っているビジネスでは、各店舗にそのままでは価値が見出されない物が集まり、それが再利用されることで、利用できる物が循環し、必然的に処分されるものの量も減ります。こういった意味では活動そのものが非常に社会貢献性の高いものです。この事実は多くの方々から喜ばれ、自分たちにとって思った以上にやりがいにもなっておりますので、今後も社会貢献につながるような事業を続けていきたいと考えています。
高橋
御社の活動自体がCSRにつながるものだということですね。
野坂
そしてそれだけではなく、アースデイでの取り組み(トレジャー・ファクトリーは2008年4月19、20日、代々木公園での環境イベント『アースデイ(地球のことを考えて行動する日)』に協賛。)のように、スタッフが自分たちの活動がリサイクル、あるいは地球環境に貢献しているということをきちんと実感しながら働いていける、そんな企業風土が目標です。
高橋
なるほど。スタッフが自分たちの仕事を通して社会貢献を実感する。そしてその実感が仕事へのモチベーションへつながる。これは大事なことですね。

では、産業を作っていくことの面白さについてはどうお考えでしょうか。

野坂
新しいニーズを生み出していくこと、社会や時代の変化に貢献できるということ、この二つが面白さというか、やりがいです。
高橋
ベアーズの家事代行サービスとよく似ています。
起業直後は誰も家事代行に価値を感じてくれなくて。でも今は人々の認識や概念が変わり、たとえばワークライフバランスのような皆を幸せにする考え方に自分たちの仕事が貢献しつつも、ビジネスの追い風になっているというのはとても嬉しいことです。
Earth Day Tokyo 2008 “アースデイ=地球のことを考えて行動する日”
トレジャー・ファクトリーは他協賛企業と「リサイクルヴィレッジ」というブースを出展しました。
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