セゾン投信株式会社 代表取締役社長 中野晴啓さん【その2】

対談
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ワークライフバランスインタビュー

中野晴啓さん

今の社会、次の社会を良くするために、“長喜投思”のバトンをつなぐ

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セゾン投信株式会社 代表取締役社長
中野晴啓さん

「長期」ではなく「長喜」、「投資」ではなく「投思」

高橋
豊かに動かして生まれたお金は、豊かに使われて、まためぐっていくんでしょうね。
中野
そう、社会循環ができていきます。単にお金儲けがしたかったら、人の懐からお金をピンはねしても手に入る。でも、世の中の成長を支えていくことで、リターンを得るというお金の儲け方もある。僕は後者を選びたいんです。
高橋
今日は資産運用や投資信託について、初めて知ったことがいろいろあります。
中野
投資って、ネガティブワードなんですよね。
「投資」と聞くだけで、自分とは関係ないと思われてしまうことが多くて、困っています。
高橋
そうだ、漢字を変えたらいいんじゃないかしら。「投資」じゃなくて、「投思」。
だって、社会を良くしたいという思いが、投資するお金にこもっているわけでしょう?
中野
すごい!それはいいですね!あ、じゃあついでにこれも相談しちゃおうかな(笑)。
「長期投資」って言う言葉も、どうも軽いというか……。僕らは長期でやることが本当に重要だと思っていて、それは生易しいものじゃないじゃないんですけど、どうもその気持ちがこの言葉では伝わらないんですよね。
高橋
じゃあ、「長期」じゃなくて「長喜」はどう?“長喜投思”、長い喜びに思いを投げるって、すごく意図が伝わると思いません?
中野
ゆきさん、天才ですね(笑)。それすごくいいなあ。
高橋
こういうすばらしい信念に、お仕事の中でたどり着かれたんですね。
中野
まだゆきさんと初めて会った頃の僕は、自分のために仕事をしていたんです。でも今は本当に、お客さまの幸せのことだけを考えています。
高橋
お会いするたびに、顔つきがいい方向に変わっていかれたのを覚えています。
中野
仕事の原点に立ち返っているんですよね。社会奉仕と言ってしまうと言い過ぎかもしれませんが、社会奉仕をビジネスにしている、という感じです。運用したお金が増えて、お客様が幸せになれば、そこから僕らにはリターンがある。お客様のために行動し続けることが、結果になるんです。そういう原点回帰でビジネスモデルをつくっています。
高橋
私は中野さんの活動は、ソーシャルビジネスだと思っています。単純にお金を増やしましょうというお話じゃないですもんね。社会のためになることをされている。夢があるんです。個人が稼いだお金を、社会の夢に転じることができるわけでしょう?
中野
そうですね。資産運用というのは、自分のお金をただ預金するのとは違うんですよね。例えば、ベアーズの株を買うとします。そうすると、ベアーズという会社ががんばって、幸せをたくさん生み続けると、売上が上がって利益も上がります。すると、株価も上がっていく。そういう増え方をするんです。会社を応援する行為なんですよね。
高橋
誰もが社会を幸せにする投資家になれるんですね。
中野
まさにそうです。投資信託を買う、つまり投資に参加することで、投資した先のビジネスに自分自身が参加することになる。これはまさに、経済活動に参加するということでもあります。
高橋
そのお金を実際に動かす部分は、セゾン投信さんにお任せしているから、どこにお金が使われているかということはいちいち気にしなくていい、と。
中野
気にしなくてもいいし、気にしてもいいんです。
高橋
ということは、お金がどこに行ったかを知ることもできるんですね。
中野
はい。そこも、既存の金融業界へのアンチテーゼです。既存の金融業界の投資業務というのは、顧客からするとブラックボックスなんですよ。何に投資されているのか、もっと言えば誰が運用しているのかもわからない。僕らの会社は、誰が運用しているということを明確にしています。また、自分が投資しているのはこういう会社です、というのをオープンにして、積極的に知らせるわけです。例えば、そこにアップル社が入っていたとしたら、自分の毎月の1万円積み立てているうちの100円が、このAppleWatchの開発を支えるお金になったんだ、といったこともわかるんです。
高橋
自分のお金が社会の役に立っている、と実感できるとお金の預けがいが出てきます。となると、私は御社の投資信託を買うだけでなく、ベアーズという会社を、セゾン投信さんに投資してもらえるような会社にしていかなければいけない、ということですね。
中野
ベアーズさんはまだ株式が未公開なので、普通の投資信託では株を買えないのですが、そういうふうに思っていただけるのはうれしいことです。上場というのは、一般的に市場からお金を調達するためにするわけです。なぜお金を調達するかというと、もっと幸せな人を増やすために、事業を大きくしたいからですよね。
高橋
先ほどの「投思」という考えで言うと、社会をより良くしたいという“思い”をたくさん調達できたらいいな、と思います。
中野
まさにそうです。だから、僕達も投資先をどうやって選ぶかというと、大事なのは共感なんです。期待と共感ですね。
高橋
それと夢ですよね。
中野
ベアーズさんは、すでにすごい会社だと思いますよ。お客様から「助かった」「便利」「ありがとう」という声をたくさん生み出していますよね。そして、さらにベアーズで働く人からも「ありがとう」という気持ちが生まれていると思うんです。それは、専業主婦としての道しかないと思っていた人たちに、ベアーズレディとして働くことで、経済活動に参加することの幸せを広く伝えているから。これが最も好きなところです。
高橋
ありがとうございます。光栄です。中野さんも、すごい初期からベアーズのサービスをご利用いただいてるんですよね。
中野
それでもまだ、家事代行も一般化はしていないですよね。自分にはちょっと違う世界だと思っている人も多い。それは、投資信託と似ていると思います。
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