ワークライフバランスインタビュー
自分の頭で考える人材を育て、社会の“幸せ指数”を上げていく
第29回
早稲田大学
グローバルエデュケーションセンター 客員准教授
村田信之さん
「ああ、いい話だった」で終わらせず、行動する人材を育てる
- 村田:
- 今までは、人と政治やビジネスの話をするときにも、経験や年齢が上の人と話す機会のほうが多かったんです。その差があったから、自分は「いい加減」でいられたのだと思います。でも今、まわりの同じくらいの歳、さらには年下の人の仕事を見ていると、こんなに厳しい目でやっていたのかと、驚かされることがあります。それに比べて自分はずっと、象みたいなのんびりした目でやってきてしまったんじゃないかって。
- 高橋:
- いやいや、私は先生とお会いした時に、厳しい目の方だなと思いましたよ。真剣に生きておられる方だと思って、興味を持ったんです。
- 村田:
- ありがとうございます。でも、自分としてはまだ詰めの甘さがあるなと思うんです。もう、これからは変わりますよ。ゼミ生にも厳しくいこうと思います。
- 高橋:
- わあ、学生さんは大変ですね(笑)。それでは、これまで約50年の人生を振り返って、幸せでしたか?
- 村田:
- とっても幸せですね。
- 高橋:
- 何が要因だったと思いますか?
- 村田:
- 2つあります。ひとつは、運が良かったことですね。今教員として戻ってきた早稲田大学に入ったこと、それが入り口になって人脈が広がったこと、カミさんと結婚したこと。全部、運が良かったなと思います。もうひとつは、行動し努力することで、目標を達成できたこと。これは運が良かったことにもつながるんですが、運がいいというのは、けっきょく運をつかんできたということなんですね。つかむチャンスを逃さないで行動する。そうすると、人生が開けてくると思うんです。
- 高橋:
- それでは、これからの人生において、世の中のどういうところを改善していきたいと思っていますか? 世の中のどういうところが不満ですか?
- 村田:
- うーん、不満ですか……高橋さんは、今の社会のどういうところが問題だと思っていますか?
- 高橋:
- 私は、自分が今取り組んでいる家事代行サービスが、日本に根付いていないことがもったいない、と思っています。みんなどうしてそこに気づかないんだろう、とも思うし、まだ私の声が小さいからみんなが見てくれないのかな、と思います。だからこそ、もっと一生懸命やらないと。
- 村田:
- なるほど。いま高橋さんの話を聞いて、僕も普段から気になってることが明確になりました。大隈塾で教えていて思うのですが、学生って考えているようで考えていないんですよね。情報は持ってるんです。でもそれは“インフォメーション”を手に入れてるだけで、それをつなぎ合わせて、インテリジェンスまで高められている学生は少ない。それって、すごくもったいないと思います。だから、もっと自分の頭で考えられる学生を増やしたいですね。
- 高橋:
- 頭で考える……?私、先生の授業にお招きいただいて話した時に、これって頭で考えるための講義じゃないと思ったんです。感じて、心を動かして、行動に移すために呼ばれたのかなと。
- 村田:
- 「感じて、行動に移す」というのは、「自分の頭で考える」ことの延長線上にあるんです。自分の頭で考えないと、高橋さんがどんなにいい話をしてくださっても「こういう人がいるんだ。あー、いい話聞いた」で終わっちゃうんですよ。話自体はただのインフォメーションです。そこから、「家事代行ってなんなんだろう」「どういう人が必要としてるんだろう」と掘り下げてみる。さらにベアーズの仕事を見に行くなど、興味を持って行動するところまで踏み込んでほしいんですよね。
- 高橋:
- インフォメーションを受け止めて、思考を深めたり、行動したりするのがインテリジェンスなんですね。
- 村田:
- そうです。インフォメーションからインテリジェンスを生み出せるようになった学生が、仕事や人生のポイントごとに集まってネットワークをつくり、社会を動かしていく。そうなればいいなと思っています。
- 高橋:
- そうやって先生は、より良い国づくりを支える人材を育てているんですね。
- 村田:
- 国もそうですし、地域づくりも、会社もづくりも支えていける人であってほしいですね。
- 高橋:
- もちろん、家庭もですよね。とってもすてきなお話、ありがとうございました。