ワークライフバランスインタビュー
自分の頭で考える人材を育て、社会の“幸せ指数”を上げていく
第29回
早稲田大学
グローバルエデュケーションセンター 客員准教授
村田信之さん
明るく楽しくやっていれば、必ず人の役に立っている
- 村田:
- 一人ひとりの幸せの指数が上がるという感じですね。誰かが幸せになると、その人の周りの人も幸せになる。それぞれの幸せが結びついていけば、もっと幸せが増えていく。そうすることで、社会全体の幸せの指数が上がると思っているんです。基本的に僕は、「明るく楽しく役に立つ」ということを行動のポリシーにしています。
- 高橋:
- すばらしいですね。じゃあ、それを学生さんたちにも伝えているのでしょうか。村田流のヒューマンデベロップメントのメソッドを教えていただきたいです。
- 村田:
- やはりいろいろな人に会い、いろいろなところに出かけていくということが大事だと思っています。だから私の授業では、秋田に田植えに行ったり、青森でウニの漁を手伝ったり、と学校の外に出ていくこともよくあります。思い立ったら行動してみる。思いつきバンザイですよ。
- 高橋:
- キャッチーな言葉がたくさん出てきますね。「思いつきバンザイ」。
- 村田:
- その思いつきに、どういう実現可能性があるかとか、マーケティングの観点から見てどうなのかとか、それによってどんなメリットがあり、どんなデメリットがあるのか、ということはとりあえず置いておきましょう。「これやりたい!」と思ったら、どわーっと走ってみる。転んでも、「じゃあもう1回走ろう」と立ち上がる。それでいいと思うんですよね。
- 高橋:
- 先生がいろいろな機会をつくっても、それを素直に受け止めて行動できる子ばかりではないですよね?
- 村田:
- 100人が100人、僕が思い描いているような道にはいかないですね。100人に教えて、10人しかついてこなかったとする。でも、それは仕方がないと思うんです。無理に全員を同じ方向に向かせようとは思いません。
- 高橋:
- 「明るく楽しく」はなんとなくできるようになった。でも、自分が何を持って世の中の役に立ったらいいのかわからない、という人も多いと思います。そういう人は、どうしたらいいのでしょうか。
- 村田:
- 明るく楽しくやっていれば、絶対に人の役に立ってるんです。それは間違いありません。「役に立てていない」と悩んでいる人は、たぶん「役に立つ」ということを、大きく捉え過ぎなんだと思います。僕は今日、高橋さんとお話できてよかったし、人生のプラスになったなと思っています。人と話すだけでも、人の役に立ってるんです。それくらいのことでいいんじゃないでしょうか。
- 高橋:
- 世の中が劇的に変わったり、相手の人生が劇的に変わったりすることだけが、世の中の役に立っているということではないと。
- 村田:
- 本人が気づいてもいない小さなことが、誰かの成功につながっているかもしれない。夢というのも、よく大きなことだと捉えられがちですが、最初はとても小さいことから始まると思うんです。それが、種となって大きく花開くという可能性はあります。
- 高橋:
- すごくいいお話ですね。主婦の方でも、今の話はすごく励みになると思います。自分のやっていることは毎日代わり映えがなく、大したことではないと思われているかもしれないですが、それでも世のため人のためになっているんだと。
- 村田:
- そうそう、人生ドンマイですよ。
- 高橋:
- 「思いつきバンザイ」に「人生ドンマイ」。先生のお話を聞いていると、気負わず楽しく生きられそうです(笑)。さて、ご自身の人生は、陸上トラックで言うとどのあたりだと思われますか?
- 村田:
- もう第4コーナーですかねえ。
- 高橋:
- 最後はどう走っていきたいと思われますか?
- 村田:
- 思いつきバンザイはそれでいいのですが、思いつきプラス緻密さがあるといいなと思っています。今まで少し脇が甘すぎたかなと。
- 高橋:
- え!そうなんですか。
- 村田:
- 最近、仕事について教えていただいている人生の先輩のような方がいるんですけど、その方が書類作成やら何やらすごくかっちりしてるんですよね。で、僕はやっぱりところどころ、抜けてるところがあるんですよ。すると、それについて「これは村田くんのいいところなんだけど、いい加減なところでもあるよね」と指摘してくださって……。これまでは、「いい加減」と言われてもプラスに捉えてたんです。ところが、さすがに50歳に近づいてきて、それじゃあいかんのではないかと思い始めてきました。
- 高橋:
- もっと厳しくなろうと。
- 村田:
- いつまでも若手じゃいられませんからね。僕と同じくらいの歳の社長さんなんて、ゴロゴロいるし。明るく楽しくいるのも大事だけれど、どこかで厳しくならないといけない歳になってきたんだと自覚しました。もう少し緻密さを加えることで、より人の役に立つことができるんじゃないかと。
- 高橋:
- 意外です……。人生の第4コーナーでより厳しくいく、という人はあまりいませんよね。