ワークライフバランスインタビュー
「超つらいけど、超楽しい。努力はきっと報われるから」
第22回
ブックオフコーポレーション株式会社
取締役会長
橋本 真由美さん
マネジメントも、フルタイム勤務も、怖気づかずにチャレンジを
- 高橋:
ブックオフで働き始めた当初は中高生だった2人の娘さんにも、今はもうお孫さんがいるとおうかがいしました。
- 橋本:
- そうですね、2人ずつ、合わせて4人の孫がいます。もうかわいくてしょうがないですね。
- 高橋:
- おばあちゃん業としては何をされているんですか?
- 橋本:
- 今流行しているおもちゃを入手して送ったりしています。
- 高橋:
- それはちゃんと調べて……
- 橋本:
- もう徹底して調べます(笑)。孫が好きなキャラクターのグッズを見つけたら、買い占めて、1個ずつ毎日宅急便で届くようにするんです。
- 高橋:
- うわあ、もうお孫さんにしたら「おばあちゃんさまさま」ですね(笑)。
- 橋本:
- 品薄のおもちゃも、社員に聞いたりして情報収集しながら必死で手に入れて、クリスマスにプレゼントしました。もうやるとなったら手が抜けないというか、一直線なんです(笑)。それで「今頃、開けてるかな」と想像するだけで幸せなんですよ。
- 高橋:
- いいおばあちゃんですねえ。いまは、仕事と生活のバランスはどういった感じでやっていらっしゃるんですか?
- 橋本:
- 夫が亡くなってからは、私の時間のほぼ95%は仕事、つまりブックオフに費やしていますね。
- 高橋:
- もうブックオフが家族みたいなものですね。
- 橋本:
- そうですね。子どもたちも「一緒に住もう」とは言ってくれるんです。たしかに子どもや孫はかわいいですし、一緒にいると楽しいのですが、やっぱりちょっとうっとうしいところもあって(笑)。一人で家にいると、明日の仕事やその先の講演のことなども集中して考えられるし、それはそれで快適なんです。
- 高橋:
- 家ではどういうふうに過ごされているんですか?
- 橋本:
- 私、家の中でも走ってるんですよ。走りながら考えているというか、基本的にせかせかしていて、ゆっくりテレビを見ていることはほとんどないですね。
- 高橋:
- 私もです(笑)。テレビをつけないうちに、総理大臣が2回変わっていてびっくりしました。経済界の人間としてそれもどうかと思っているのですが……。
- 橋本:
- そうなんですか(笑)。仕事も、明日のことだけでなく、先々まで全部準備をして、予習と復習をしないと気がすまないんですよ。
- 高橋:
- 日々、努力されてるんですね。
- 橋本:
- 私は頭が悪いので、人一倍やらないとダメなんです。研修も毎回参加者の名前を覚えて、その人の加盟店の業績はどうなのか事前に調べます。そして、帰ったあとも、研修室に残って板書しながら復習するんです。そうそう、服も、1週間先まで全部用意して、並べておくんですよ。
- 高橋:
- それはすごいですね! たしかにテレビを見ている暇はないですね。
- 橋本:
- 食事も、健康診断の数値がよくなかったので、なるべく手作りして体にいいものを食べるようにしています。野菜を中心にしているのですが、やっぱりお肉も食べたいんですよね。
- 高橋:
- じゃあ昼間にお肉を、夜はお野菜中心に、というのはいかがでしょうか。私はそういった食生活にしているのですが、すごく調子がいいですよ。でも、橋本会長はすごくパワーを消費されていると思うので、毎日お肉を召し上がってもまったく問題ないと思います(笑)。
- 橋本:
- そうですかねえ、出張に行ってもおいしいものたくさん食べてしまうので、要注意なんです。それで、寝る前には脳トレのゲームをします。寝る直前までやるので、大抵起きたらベッドからゲーム機が落ちてるんですよ(笑)。でもどんなに疲れててもやります。
- 高橋:
- すごいですね、私はまったくゲームをしないんですけど、これを機にやってみようかと思います。おもしろいですか?
- 橋本:
- おもしろいですねえ、すごくハマってしまいました。
- 高橋:
- 会長はもしかして、ハマりやすい体質なんでしょうか。
- 橋本:
- まったくそのとおりですね(笑)。でも、やっぱり趣味よりも仕事がうまくいったほうがうれしいんですよね。仕事の報酬は仕事、というのはまさにそうだと思います。
- 高橋:
それでは、今後の展望を教えてください。
- 橋本:
- いま私、隠れた野望があって、「橋本学校」をもう一回やりたいんです。
- 高橋:
- 「橋本学校」ってなんですか?
- 橋本:
- 10年ほど前、私が店長を務める店舗に、全国からオーナー様や店長さんが訪れていたんです。一緒に店舗に立ってもらったり、仕事が終わってからファミレスで話したりしているうちに、皆さんがいろんなことに気づき、元気になって帰っていく。それが自然に「橋本学校」と呼ばれるようになったんですね。
- 高橋:
- 実地の研修が、自然に行われていたんですね。
- 橋本:
- それをまたやりたいんです。学校というほどしっかりやるのは無理だと思うんですが、一つの店舗を仕上げて収益を出して、また次の店舗を仕上げて、と一つひとつやっていきたい。もう一度ブックオフを全部見直すのが、これからの私の仕事だと思うんです。
- 高橋:
- 気持ちの面だけでなく、収益を出せる人を育てるために、心技体を鍛えていくんですね。
- 橋本:
- そして、ベアーズさんとの連携も進めていきたいと思っています。
- 高橋:
- 弊社のサービスでお客様のお宅におうかがいした際に、ブックオフさんの買い取りサービスについてご紹介して、不要品があればブックオフさんに買い取りをお願いする取り組みをさせていただいているんですよね。
- 橋本:
- 改めて、なぜいまリユースなのかということを考えたんです。そうしたら、役員の一人から「地球規模で考えたらどうか」という意見が出ました。使い捨ての時代は終わり、地球の資源には限りがあることにみんな気づき始めました。だったらブックオフが、捨てられてしまうはずだった本や洋服などを、もう一度誰かに使っていただけるようにするのは、意義がある仕事なのではないかと思います。
- 高橋:
- 循環をつくり出すということですね。本を選ぶときにも、それぞれの思いがあります。それをブックオフさんに買い取ってもらい、店頭に並べていただければ、またその思いを買って行かれる人がいる。思いも循環していきます。リユースの考え方や行動が、新しい習慣になったらうれしいですよね。
- 橋本:
- 私たちは「捨てない人のブックオフ」と言っています。使わないものがあった時に、捨てるのではなく、ぱっと「ブックオフに売りに行こう」と思っていただける。そんなインフラと呼ばれるような企業になりたいですね。
- 高橋:
社会生活を応援するインフラですね。
- 橋本:
- そのためには、やっぱり誰にも負けない努力をしなければ、と思います。努力をすれば、大抵のことは何とかなる。そう信じていますから。
- 高橋:
- カッコいいですね。
- 橋本:
- それを言うからには、自分が背中を見せないとね。だから、これからも私は現場に入って、必死でがんばろうと思います。