編集後記:物語が、現場の心に灯したもの【『カフネ』座談会連載第4弾】

家事の悩み

本屋大賞2025の受賞をきっかけに、『カフネ』という物語は大きな注目を集めました。その熱は、世の中だけでなく、私たちベアーズの現場にも、自然なかたちで届いていました。

書店に並び、話題になり始めた頃から、
「読んでみてほしい本がある」
「これは、私たちの仕事の話だと思った」
そんな声が、スタッフ同士の会話や社内のあちこちで聞かれるようになったのです。

実際に多くのスタッフが『カフネ』を手に取り、次々と感想を寄せてくれました。

「自分の体験と重なる場面が多く、移動の車内で一気に読んだ」
「今まで訪問してきた、たくさんのお客様の顔が浮かんだ」
「サービスを終えると、少し元気を取り戻してくださるあの瞬間と重なった」

この物語は“家事をする側”の心にも、まっすぐ届いていたのです。

『カフネ』は、家事を「やってもらう側」だけの物語ではありません。
日々、誰かの暮らしの中に入り、言葉にされない疲れや孤独を感じ取りながら、静かに手を動かす——
そんな家事代行という仕事の本質を、真髄まで描いてくれた物語でした。

あるスタッフはこう話してくれました。
「私たちの仕事をここまで深く捉えてくださり、ありがたかったです。ただ掃除や料理ではなく、利用した方がどんなふうに救われるのかが描かれていて、人を助けることができる仕事なんだと、改めて感じました。」
「家事代行はお客様のためにある仕事のようですが、実は自分自身に自信をつけたり、自分を立て直す仕事だと思いました。」

家事代行は、ときに「裏方」や「代わりの手」として語られがちです。
けれど、お客様の疲れ切った表情が、少し緩む瞬間、ほっと息をつく時間。
「ありがとう」「また来てほしい」という一言は、担い手の胸を静かに満たします。

頼られることは、決して一方的な負担ではありません。
そこには、誰かの人生を支えているという実感と、
支えているはずの自分自身もまた、救われているという循環があります。

『カフネ』は、その循環を、物語の力で可視化してくれました。
そして同時に、家事代行を知らない方々へも問いかけています。
「もしかしたら、あなたはもう十分に頑張っているのではないか」
「助けを必要としている自分に、気づいていないだけではないか」と。

ベアーズが目指してきたのは、家事を完璧にすることではありません。
必要なときに、必要なだけ、誰かの手を借りられる社会。
そして、頼られることを喜びとして受け取る人が、誇りをもって立っていられる社会です。

この物語がそうであるように、ベアーズは、
今まさに暮らしに疲れている誰かの心にも、
そして「支える側」として日々を生きる誰かの背中にも、
そっと手を添える存在であり続けることを願っています。

必要なときには、どうか思い出してください。
頼られて嬉しい人が、ここにいます。

講談社提供:左よりベアーズレディ阿久津美和子・『カフネ』著者阿部暁子さん・ベアーズ副社長髙橋ゆき・ベアーズ広報服部祥子・ベアーズレディ丸子美奈子

【バックナンバー】

第1部「ファンレターから始まった、家事のぬくもりを語る時間」はこちらから
第2部「『家事は希望』——現場で響き合ったフィクションとリアル」はこちらから
第3部「研修とサービス視察を通して見えた『頼る』の未来」はこちらから

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